
2022年にAppleがiPod Touchの販売を終了し、20年以上に亘るiPodの歴史が幕を閉じてから早二年。
音楽再生が専用機からスマホへ、MP3からストリーミングへと移るにつれてiPodが人々の記憶から消えつつある中、ある者がその存在を思い出させてくれました。
そう、iPodの生みの親・Appleです。
先日開催されたWWDC24の冒頭映像に初代iPodが登場し、話題になりました。
この映像がきっかけでiPodのことを思い出したという方も多いのではないでしょうか。言うまでもなく、私もそのうちの一人です。
このブログでも初期の頃にはiPodの記事を書いていたし、HDDを取り外して大容量のフラッシュメモリー化する定番の改造を行ったりもしていたのですが、いつしかiPodへの興味は薄れていってしまいました。
イヤホンやヘッドホンはワイヤレスが当たり前になり、音楽ファイルをローカルに保存することも無くなった今ではiPodなど前時代の遺物。
冷静に考えればその通りなのですが、何故だか無性にiPodに触れたくなって、引き出しの奥から取り出してしばらく使ってみました。
ー電源を入れるとカリカリと唸るハードディスクの回転音。
ースムーズに追従するクリックホイールの唯一無二な操作感。
ー時代を感じさせる横長サイズの30ピンDockコネクタ。
次第にあの頃の気持ちが蘇ってきて、気がつくと手元のiPodは二台に増えていました。
iPod Photoとは

2001年に発売されたiPodは毎年のようにアップデートを繰り返し、2002年の第二世代ではWindowsに対応、2003年の第三世代ではそれまでのFireWireコネクタに代わってDockコネクタが、2004年の第四世代ではアイコニックなクリックホイールがそれぞれ採用されました。
このように進化を続けるiPodでしたが、液晶だけは初代から変わらずモノクロ。PCから転送できるのも音楽データのみでした。
そんなiPodの常識を覆したのがこの"iPod Photo"です。
搭載する2インチの液晶は220x176ピクセルで、65,000色のカラー表示が可能。
"Photo"の名の通り、PCから転送した写真をスライドショーで眺めつつ音楽を楽しむこともできました。
バッテリー持続時間は前世代の12時間から向上し、15時間に。ストレージは40GB,60GBの3種類がバリエーションされ(2004年)、のちに30GBモデルが追加されました(2005年)。
デザイン

表面は現在のApple製品にも通じる白いポリカーボネート。透明な樹脂に裏面から白く塗装するという手の込んだ仕上げになっています。
サイズはiPhoneよりも小さいものの、厚みがあるおかげでしっかりと手でホールドすることが可能。
音楽や写真の操作はグレーのクリックホイールに設けられたタッチセンサーと5つのボタンのみで行う仕組み。
シンプルな円上で曲送りや曲戻しから音量調整、設定変更まで全ての操作をまかなっていました。
このクリックホイールは、現在でも様々なオーディオプレーヤーに模倣されるほど画期的なコントロールデバイスでした。
スムーズな操作感とシンプルな構造でとても便利なクリックホイールですが、もちろん欠点も。ポケットなどに入れるとしばしば誤作動を起こしました。

それを防ぐために、上部に設けられたのがこのホールドスイッチ。
これをONにすることによって全てのボタン操作を無効化し、ポケットやカバンの中での誤作動を防ぐ仕組みとなっています。
ホールド状態に切り替えると赤い部分が露出し、視覚的にもわかりやすい仕組みです。
その隣にあるのはイヤホンジャック。ここから伸びる"白いイヤホン"の伝統は現在のAirPodsにまで受け継がれています。

充電と通信を行うために下部に設けられているのは30ピンドックコネクタ。
2003年に初めて採用されたこの大きなコネクタは、2012年にLightningコネクタが採用されるまでの間、長らくAppleの汎用コネクタとしてiPodをはじめ、iPhoneやiPadなど様々な製品に搭載されました。
Lightningコネクタですら過去の規格となった現在、もはや化石と言っても過言ではないこのコネクタはなんと現在でもApple Storeで購入することができます。

背面は鏡面仕上げのステンレス製。
現在でもiPhone Proシリーズに用いられる光沢のあるステンレスは高級モデルの証。
使いこむほど増えていくたくさんの傷は、このiPodの歩んできた歴史を示しているかのようです。
はじめに傷のついたステンレスを美しいと言ったのは誰だったでしょうか。
機能

この頃のiPodに搭載されていた機能は至ってシンプル。
iPodの根幹をなす音楽再生機能とiPod Photoの一番のウリである写真閲覧機能を除けば、実用的なのは時計とちょっとしたゲームだけ。
メモやカレンダー、アドレス帳機能はiPodでの書き込みができず、可能なのはPCから転送したデータの閲覧のみ。画面ロックもないので、使うには少しセキュリティが心配ですね。
写真が見られるなら動画も...と欲張りたいところですが、iPodで動画の再生が可能になるのは2005年秋の第五世代を待たねばなりませんでした。

再生画面は曲名とアーティスト、アルバム名に加えてカラーのジャケットが小さく表示されるシンプルなレイアウト。ジャケットはセンターボタンで拡大して表示することもできます。
リピート再生は"設定"メニューから行うようになっていました。
Macとの同期はFinderアプリを使います。
2019年のmacOS Catalina以降"iTunes"アプリが"Music"アプリへ変更され、それに伴ってFinderでiPod/iPhone/iPad等の同期を行う仕様となりました。
約20年前の製品が現在でも認識され、同期できることに驚かされます。
数々の規格や端子を切り捨ててきたAppleのデバイスとは思えない高待遇ですね。
キーボードやマウス等の周辺機器を除いて、これほど長く活躍できるApple製品はiPod の他には存在しないでしょう。
音質

約20年前の製品ですから、音質は現代のスマホとは比較になりません。
それでも、iPodは聴いていて心地良いと思わせる音を鳴らしてくれます。
いつものヘッドホンを外してそっと白いイヤホンを耳に着け、カリカリとホイールを回す。
曲を選んでボタンを押し込むと、ハードディスクの振動が手のひらに伝わってくる。
耳に流れ込んでくるのは、懐かしいあの頃の音。
ワイヤレスイヤホンのように便利ではないけれど。
Spotifyのように簡単ではないけれど。
iPodはただの音楽プレーヤーではなく、"音楽を聴く"という行為の楽しさを思い出させてくれる、そんな製品だと私は思います。
iPodで音楽を聴こう
iPodを棚の奥に仕舞い込んだままという方は、是非取り出して音楽を聴いてみてください。きっと音楽を聴く楽しさを思い出せるはずです。
ここでは、iPodを持っていない/処分してしまったという方におすすめのiPodをご紹介します。とはいえApple Storeでの販売は全て終了してしまっているので、基本的には中古での購入になります。
私のおすすめは第五世代iPod(iPod Video)です。
今回紹介したiPod Photoの次世代機に当たるiPod Videoは、その名の通り動画再生が可能なほか薄型・軽量なデザイン。
その構造と材質から分解が容易で、HDDを大容量のSDカードに換装する改造は定番中の定番。
現在でも多くの交換部品が製造・販売されており、その気になれば交換用部品だけで新品のiPodを一台組めてしまうほどです。
後継のiPod ClassicではEarPodsのリモコンが使えるなどより進化していますが、フロントパネルの材質がこれまでのポリカーボネートからアルミに変更されたため、開腹時に傷を付けてしまったり曲げてしまうリスクがあるので初めて改造に挑戦される方にはiPod Videoをおすすめします。
他にもiPod miniやnanoにShuffle、Touchなど数多くの機種がありますが、これらは分解が比較的難しく改造の余地も少ないため避けた方が無難でしょう。
まとめ

思えば、私がAppleファンになるきっかけもWWDCでした。
2017年のWWDC開幕映像・Apocalipseに登場したiPodに惹かれ、iPodに手を伸ばしました。その7年後に同じくWWDCの開幕映像がきっかけで同じ機種を購入するとは思ってもみませんでしたね。
この7年の間に、人々のiPodに対する認識は単なる古いガジェットからおしゃれなアイテムへと移り変わりました。有線イヤホンを使うことがブームになったり、iPodをコレクションすることが流行したり。
主にiPod関連のガジェットを扱うYouTuber・DankPods氏の登録者数は150万人を超えています。
それだけiPodの小さな体には、人を惹きつけるだけの魅力がぎっしりと詰め込まれていということです。
いつかVision Proなどの未来のガジェットがiPhoneを置き換え、iPhoneで聴く音楽すら懐かしく感じられる時が来ても、iPodで感じた"使う楽しさ"だけは忘れずにいたいものですね。
参考文献





